USMLE受験生の日記

研修医2年目(114回勢)です。ただのブログに終わらず、有用な情報を発信できたらと思っています。USMLE、臨床推論、国試、その他日常について書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

USMLE STEP1 概説

こんにちは。

この記事はUSMLEを受験する、というよりどういう試験なのかが気になる、という方向けに書いておきます。

いろいろな方のブログなどを拝見して得た知識をまとめたものとなっております。

間違いなどありましたらコメントしていただけると幸いです。

 

USMLE

United States Medical Licensing Examination(米国医師免許試験)

のことで、読んで字のごとくアメリカの医師国家試験です。日本の医学部生は学年を問わず受験できるようです。

が、後々書きますが受けるなら早くても4・5年生をお勧めします。

USMLE

 

STEP1(基礎医学中心)

STEP2

-CS(Clinical Skill)

-CK(Clinical Knowledge)

STEP3(STEP1、STEP2の融合のようなもの)

 

と4つの試験に分かれており、それぞれ申し込んで受験します。

STEP1とSTEP2はどちらから受けてもいいそうです。

基本的にはパソコンに向かってマルチプルチョイスの問題を解いていくものですが、STEP2 CSは日本のいわゆるOSCEのようなもので求められるレベルはずっと高いです。

問診、診察、検査のオーダーなどまで求められます。

 

STEP1は300点満点で、合格最低点は194点とよく書かれていますが近年上昇傾向にあるみたいです。

200点を超えるかもしれませんね(それかもう超えてる?)。

合格者平均は224点なのでおおまかに225点と自分は考えています。

CBTと同じで単純な問題の正答率でスコアが出るわけではないみたいで、おそらく問題1つ1つの難易度を加味したスコアを出しているんでしょう。

 

 

試験はいつでも受けることができます

ただし申し込みがなかなか面倒で、受けると決めて1週間後に受けられるというほど気軽に受けられるものでもないです。

申し込みを始めてから受験まで3ヶ月ほどかかると見た方がいいそうです。

受験会場は現在のところ東京の御茶ノ水と大阪の中津(大阪駅[梅田駅]の隣の駅)の2会場から選択します。

申し込みは昔は大学の学務とのやりとりもあったみたいですが、現在は少なくとも自分が学務とやりとりすることはなくなりました。

 

ひとまずSTEP1・2をパスすれば向こうでのマッチングに申し込むことができるようです。

逆に言えばSTEP1だけ受かっていても自信がつくくらいでほぼ全く実益はないのです。

そしてなぜかアメリカのマッチングの際に重要視されるのはSTEP1のスコアです。

日本の国試と違って受かればいいのではなく、合格時のスコアによって希望の科が左右されるようですね。

普段の実習では卒業してしまえば学生時の成績なんて関係ないとはよく聞きますが、

アメリカではその学生時の成績で科が決まるんですね…。

 

ちなみに、不合格なら(お金があれば)合格するまで何回でも受験できるみたいです。

ただし、failedみたいな不名誉な称号も付与されるみたいなのでできたら1回でpassしたいですね。

また、1回受かってしまう(?)ともう一度受験することはできないので、合格最低点で受かってしまうと辛い(のか?)。

※詳しくは知りませんが、日本からのコネで臨床留学する場合などはスコアに関係なく受かってさえいればOKみたいなこともあるみたいです。実態がわかってきたら書きたいと思います。

 

 

そして案外受験しようか考えた時に忘れがちな受験料がとにかく高いです。

先日ECFMG(受験に必要な前段階のもの。後日書きます)のCertificationの申請で$135(≒15000円)かかりました。

そして肝心なSTEP1の受験料は10万を軽く超えているようです(まだ申し込んでいないので、申し込んだら具体的な数字を書きます)。

つまり受験するだけで15万ほどかかると思っていてください。

※ECFMGの代金も昔はもっと安かったようです。

 

 

 

 

以下、さらに細かく述べていきます。

USMLEに興味はあるけど、難易度とかどんなもんなんだろう

 

まずはSTEP1を受けたいけど、基礎医学ってことは3年終わったくらいでできるの?

 

日本のCBT、国試の勉強をしっかりやっていればあとはそれを英語で覚えればUSMLEも余裕なの?

などなど、いろいろと思われると思います。

現在Uworld(USMLEのオンライン問題集)を2000問ほど解いてやっと少しSTEP1のレベルなどが分かってきたので

主に”USMLEに興味はあるけどどんな試験なのかもよくわからないのでとっつきにくい”という方に向けて書きたいと思います。

 

①試験内容・範囲

STEP1は以下の科目から構成されています。

Biochemistry(生化学)

Immunology(免疫学)

Microbiology(微生物学)

Pathology(病理学)

Pharmacology(薬理学)

Public Health Sciences(公衆衛生)

Cardiovascular(循環器)

Endocrine(内分泌代謝)

Gastrointestinal(消化器)

Hematology and Oncology(血液・腫瘍)

Musculoskeletal, Skin, and Connective Tissue(筋骨格、皮膚、結合組織)

Neurology and Special Senses(神経・特殊感覚?)

Psychiatry(精神科)

Renal(腎・泌尿器)

Reproductive(産婦人科・生殖?)

Respiratory(呼吸器)

Behavioral Science(行動科学…精神科、ヒトの発達、死生観などの融合分野)

です。

あれ?生理とか解剖とか発生は出ないの?と思われると思いますが

それぞれの臓器別に生理学やらの問題も出ます。悲しいですね。

小児科、眼科、耳鼻科などもBehavioral science、Special sensesなどに含まれており、日本の医学部で勉強するほとんどは出題範囲となっております。

おそらく唯一、日本の国試に出てSTEP1に出ないのは「放射線医学」だと思います。

ベクレルとかなんとか、そういうのは出ません。

また当然ながら日本ではあまりみられないけど欧米ではみられるもの(嚢胞性線維症、選択的IgA欠損症、ジフテリアなど)も出題されるのでUSMLE特有の知識が盛りだくさんです。

基礎医学中心といっておきながらがっつり臨床の問題も出ます(②参照)

 

 

②難易度

そして気になる難易度ですが、残念ながら明らかにCBT・国試よりは難しいです。

というのも、日本のように「肥厚性幽門狭窄症について正しいものを選べ」といった単なる知識問題はほとんど出ません

というか見たことないくらい…。

 

だいたいは

VDRL positiveの患者に対してペニシリンGを投与した数時間後に発熱、寒気、関節痛が出現した。この患者の病態の説明として正しいのは次のうちどれか

43歳女性が食後の激しい上腹部痛を主訴に来院した。これまでも脂っこい食事の後に比較的軽度だが似たような痛みを経験している。右季肋部痛を認める。この患者の現在の症状の原因となっているホルモンは次のうちどれか(選択肢5〜8つくらい)

といったような問題が出ます。

1問目 スピロヘータ[梅毒]のJarisch-Herxheimer反応で、薬剤により菌の崩壊が起こった

2問目 胆石症で、胆嚢を収縮させるコレシストキニン

 

「この病態の説明として正しいものを選べ」が国試などではあまり見られない問題形式でしょうか。

低学年時の基礎医学の勉強は、症状というより何かの表であったり反応経路などをひたすら覚えるといったスタイルだと思いますが

このように患者の症状→診断を考える→その疾患に至るまでのプロセス(つまり病態)を基礎医学レベルまで掘り下げて答える、という流れになることが多いので、どうしても4年以降で臨床を勉強していないと難しいと思われます。

なかには「この患者の感染症の感染経路は次のうちどれ?」みたいな問題であるにも関わらず、そもそも診断から分からない、なんてこともあったりします…(答えをみたらウエストナイルウイルス感染症だったりして泣きそうになります)。

もちろん 診断はどれ? という問題も出ますが、そういうシンプルな問題ほど難しいです。デング熱だったり野兎病だったりで、診断を問う問題でCOPD心筋梗塞みたいな問題は出ません。

もちろん臨床ではないガッツリ基礎医学!って感じの問題も出ます。

一過性に虚血状態に陥った心筋細胞は肥大化していたが、この機序として正しいものは次のうちどれか

(解答. 細胞内カルシウムの蓄積

みたいな感じです。

 

 

③勉強法

そんなに日本の医学部の勉強だけで対抗できないなら対策なんてできなくないですか?!

と思われる方もおられると思いますが

少しでも調べたことのある方ならご存知のバイブルともいうべきFirst Aid(以後、FA)があります。

これは毎年編集されて発売されているテキストで、

上記の試験範囲のほぼ全てをこれ1冊で網羅しています。

基礎から臨床まで1冊にまとまっているなら内容の深さは大したことないんじゃないの?

と思われるかもしれませんが、説明がかなり雑ゆえ大事なことも一文で収まったりしているおかげで、だいぶ深いことまで書いていることも多々あります。

おそらくFAを読まずに受けるのはセンター試験の過去問や問題構成・傾向を知らずに本番を迎えるくらいヤバいと思います。

なぜなら、さきほどのJarisch-Herxheimer反応といったマイナーな知識であっても、

小さい字ながらもFAに書いてあり、USMLE受験者は皆それを読んでくるからです。

 

いろいろなサイトには「FAさえ丸暗記すれば余裕らしい」といった意見も散見されましたが、残念ながらそんなこともないような印象です。

王道の問題演習はUworldというオンラインで解く有料の問題集です(僕もこれをやっています)。

試験本番と同等〜それ以上の難易度で、そこで出題される問題を解いていると

解答に辿り着くにはFAには載っていない/載っているが説明が不十分なことが多々あります

なので逐一そういった知識が出てきたらFAの該当する範囲のページにメモで付け足していき、

自分なりのFAを完成させるのがUSMLEの勉強といっても過言ではありません(たぶん)。

 

受かるだけならFAの知識だけで十分なのかもしれませんが、実際に受験した方のブログを拝見してみると

「見たこともないような疾患がでてきた」

と書いてあることが多いため、15万も払うのならば、受かるかどうかギリギリを攻めるような怖いことはしたくないと思いますので

Uworldなどで知識を付け足していくことが無難だと思います…。

Uworld、NBME、Kaplanなど多数の選択肢がありますが、今回はひとまず簡単なまとめということなので、勉強の各論は今後書いていけたらと思います。

 

 

④問題文は当然英語だけど大丈夫か

当たり前すぎるのですが問題文は全て英語なので問題を解く以前に問題文を理解できるか不安という方もいると思います。

自分は1年の暇なときに基本的な医学英単語(esophagus, ulna, abdomen, abductなど)を暗記していたため思っていたよりは苦労しませんでしたが、

0からのスタートの場合はやはり問題文を読むのがキツいという非常に苦しい期間があるようです。

USMLEを受けようと決めた直後はキクタンメディカルなどの医学英単語帳などを利用しようか迷いましたが、

自分は5年の11月からのスタートで、どんなに引っ張っても7月から始まる日本のマッチングの1ヶ月前までにはケリをつけようと決めているため、

問題を解いていくなかで覚えればいいや、ということで特別なことはしませんでした。

自分も1000問ほど解くまでは知らない単語が出てきたため毎回スマホのメモに書き留め、トイレやちょっとした空き時間に復習していました。

問題文の文法は京都大学で出るような意味不明な英文は全くなく、非常に平易な文章なので語彙力さえつければ問題ないです。

 

 

いつのまにかかなり長くなってしまったのでひとまずこれで終わります。

何か付け加えることがあったら付け加えたいと思います(2019/3/29)。