USMLE受験生の日記

研修医2年目(114回勢)です。ただのブログに終わらず、有用な情報を発信できたらと思っています。USMLE、臨床推論、国試、その他日常について書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

研修医生活 おすすめ本(病棟・救急外来編)

お久しぶりです。

第116回国試も終わりましたね。

116回受験組の皆さまはお疲れ様でした。

Twitterでも色々と話題になっていましたね笑

 

僕はというと、研修医になってから全く記事を書いておりませんでしたが、特に病んだわけでもなく平和に、同期に恵まれて過ごせておりました。笑

にしても自分が初期研修医として過ごした2年間は丸ごとコロナ禍に被っており、ノーマルな東京を満喫することは叶いませんでしたね。

おそらく医師として働く人生の中で一番暇であるはずの2年間がこんなことになってしまい非常に残念ですが、学生時代に被って旅行に行けなかったよりはマシですね。

そして来年度は専攻医として勤務します。

診断学などが好きなのでそういったものに精力的に取り組んでいるところで修行できればと考えていますが、働き出してわかったのですが、「(特に不明熱で)診断に悩んだら○○科」といった内科が各病院にあるっぽいということがわかり、将来はそういった診療科に行くのもありかもしれないと考え初めているところです。

 

そして間もなく研修医生活が終わってしまいますが、この時期だからこそ「今も使っている」、「振り返ってみるとよかった」と言えるものを研修医目線でまとめておこうと思い、記事にまとめておこうと思いました。

あくまで僕が使ったものの中での話ですが、一応2年間+学生時代に100冊近く読んだので、研修生活に向けて買った方がいい本などで参考にしていただければと思います。

 

色々な診療科の本を買って勉強したので、今後は各診療科ごとにも紹介したいと思います。

必須〜おすすめ」、「あると便利」、「プラスα〜おまけ」の3つに分類してみました。

また、僕自身が内科志望であるため主に内科の本で構成されています。

 

では今回は病棟編と救外編をご紹介します。

また、今後適宜更新していけたらと思います。

(最終更新 2022年2月18)

 

①病棟全般

まず初めにどの病棟でも日常勤務で役に立つものをあげてみました。

内科系であれば全診療科をカバーしているものばかりなのでどうしてもここのものは高いです。

 

1. 内科レジデントの鉄則

言わずと知れた名著ですね。

読みやすさ・量・網羅度を総合的にみると、やっぱりこれが一番かなと思います。

「A 当直で呼ばれたら」、「B 内科緊急入院で呼ばれたら」、「C 入院患者の管理で困ったら」の3部構成になっていますが

AとBは実質同じというか、どちらも救急外来でも活躍すると思います。

この本はかの有名な聖路加国際病院発の本なのですが、たしかここって研修医(1年目だっけな?)は当直は病棟対応のみなんですよね。

ただ、多くの病院は当直=夜間の救急外来±病棟対応だと思うので、当直時はA+B、日中の勤務としてはA〜C(主にC)がカバーしていると思われます。

ショック患者などで避けては通れない「ガンマ計算」についてこれで初めてしっかり勉強する方が多いのではないでしょうか。

初期研修医が昇圧薬の速度を調整することはあまりないかもしれませんが笑

 

 

2.ホスピタリストのための内科診療フローチャート

総合診療界隈では超有名な飯塚病院の清田先生、丸太町病院の上田先生、市立奈良病院の高岸先生という豪華すぎるメンツによる本です。

タイトルの通り、内科全般の範囲を診断から治療までの流れがフローチャートで書いてあるだけでなく

そのフローチャートの詳細な説明(根拠の論文も詳細に記載されています)が載っています。

主に疾患別にまとまっているので、「○○病かな?」と思ったときなどに効果を発揮します。

ややお高いのですが、中身の濃密さを見ればむしろ安いくらいなのでは、と思います。

個人的には抄読会などの当番になった際などにここで へ〜! と言ってしまうようなところを見つけ、その根拠の論文を発表することで何度か乗り切りました。笑

 

 

2' 総合内科病棟マニュアル

これの中身の密度は2の下位互換な印象です。

まぁ、こちらは病棟マニュアルなので診断、治療以外のことも取り扱っているため単純な比較は難しいです。

カバー範囲は広いのですが、広すぎるゆえに実用的なレベルまで取り扱えていない印象です。

あと2に優っているのは一応ポケットサイズなので持ち運びはしやすいです(分厚いのであまり適してないけど笑)

 

3. 卒後15年目の総合内科医の診断術

こちらはタイトルの通り、診断メインの本です。

2の本との違いとしてこちらは症候別でまとまっているので、これは診断に悩んだ際に役立つかなと思います。

思わず ヘェ〜 といってしまうことが盛りだくさんなので、診断学に興味がなくても内科志望であれば読むと30分間くらいは面白いかもしれません笑

文章がメインであるため、救急外来などで読みながら診療するには不向きです。

2と3は両方あると良いですが、高いのでどちらか1つ、というのであれば2の方がいいかなと思います。簡単な記載ですが治療まで書いてあるので。

 

4. 内科病棟・ERトラブルシューティング

こちらは2の上田先生と高岸先生の著書ですね。

腹痛や胸痛などについても書かれていますが、これは症候の他にも、なんと言いますか

「CPK上昇時のアセスメント」

「輸血閾値

「不眠の対応」

「入院患者の血糖コントロール

といったように、研修医向けの本ではあまり大々的に取り上げられないけども、現場では避けては通れないことについても書かれています。

腹水、胸水の検査項目などで漏れがないかは僕はこれか2'で確認しています。細かいですが笑

 

5. 病棟・ICU・ERで使える クリティカルケア薬

2021年9月に発売されたばかりのものなのであまり使われているのは見ませんが、本当におすすめです。

鎮痛・鎮静薬、循環作動薬、抗てんかん薬などからビタミン剤、脂質異常症の薬までカバーしています。

具体的な投与法・時間や、点滴→経口の切り替え時の用量変更などまで書いてありますので、

イーケプラ(レベチラセタム)を普段内服している方が意識障害で入院となった。点滴に変える時は量はどうする?

などといった時に効果を発揮します。もちろん病棟薬剤師さんや上級医に相談しますが、たまに上級医も知らないマイナーなものがあったりしますので、「この本にはこう書いてます」といった風に使えます。

本屋によっては薬剤師さん向けのコーナーに置いてあったりします。

これは病棟を持つ診療科であればどこでも役に立つと思います。

おそらくこういう系の本でメジャーなのは「ICU/CCUの薬の考え方, 使い方 ver.2」だと思いますが、個人的には見やすさ、使いやすさから負けていないどころか優っていると思います。

 

6. レジデントのための これだけ輸液

国試までの勉強では現場では圧倒的に足りない分野として輸液があると思います。

ほぼ全ての科でオーダーするというのに、なんででしょうね。

なのにも関わらず、輸液の本というと体重の60%が〜、そのうち細胞内液が〜、、、、と、よくある2:1、もしくは8:3:1の図が載ったりしていて初学者からすると正直そんな長々と読んでいられないです(よね?笑)。

大事なのはわかるのですが、それを覚えても救外で看護師さんから「先生、点滴速度どれくらいにしますか?」と聞かれても答えられません。

天才ならば別かもしれませんが、ひとまず救外や病棟で輸液のオーダーをする際に使える無難な知識を最初に持ってきているのがこの本です。

また、クレンメなどの点滴グッズの名前の紹介もあり、マジの初学者向けです。

余談ですが、看護師さんなどは我々医師が医学部時代にクレンメ、サーフロー、スピッツ、などという単語は実習でたまたま教わらない限り知らないということを知らないんでしょう。

4月の何も知らない時期にも「そのスピッツの横のやつ取ってください」、「ルート何Gで取りますか」って感じで声をかけてきます。

(多分)みんなが通る道なので、まずは何も知らない自分が嫌にならないようにしましょう笑(知っていたらすいません)

 

7. シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン 第3版

これは6の本を読んでから読むくらいがちょうどいいと思います。

国試の勉強である程度やったと思う方はこれから始めてもいいかもしれません。

個人的には前半の半分だけ読めばいい気がします。

ちなみにその後のさらなるプラスαとして読むとすれば「体液電解質異常と輸液 改訂3版」でしょうか。僕はこれは本当に細かい機序などが気になった時に読む辞書として使用しています。

 

8. 栄養療法 はじめの一歩

輸液と同様、栄養に関しても国試ではかなり足りない範囲かなと思います。

その割に色々な診療科の病棟で頻繁に「この人いま何カロリー入ってるんだっけ?」、「ラコールは〜」などという会話が多いです。

ラコールだのエンシュアだのいわれても普通の研修医本には全然書かれていません。

ここには簡単な説明であったり、考え方が分かりやすく載っているので、一読の価値はあると思います。

僕はこれを読んで「栄養療法ドリル 」を解きましたが、これはプラスαかなと思います。

ちなみにこれの続編として「栄養療法にもっと強くなる」がありますが、これは読まなくていいと思います。「もっと強くなる」で何を学んだかと思い返してみるとあまりなかったなぁとしか思えないので…。笑

 

9. レジデントノート2021年5月号 病棟指示と頻用薬の使い方

医師の仕事として「病棟指示」や「継続指示」なる指示を出すというものがあります。

これは簡単に言えば「何か小さなプロブレムが起きた時に備えての事前指示」といえばいいのでしょうか。

例えば患者さんが深夜に眠れないと訴えているとき。

夜3時に主治医のプライベートな携帯電話や救急外来で対応中の当直医に「○○さんが眠れないそうですが、どうしましょう?」と病棟看護師さんがいちいち電話しなくてもいいように、あらかじめ「不眠時 ベルソムラ15mg 1錠内服」などのようにカルテに登録しておく。これを病棟指示や継続指示と言います。

もちろん実は不眠ではなくせん妄の可能性もあるので医師が診察するのが望ましいですし、実際に全例医師が診察した上で方針を決定する、という病院の話も聞いたことがありますが、多くの病院はまずは継続指示→解決しなければ当直医に相談、という対応をしている病院が多いのではないでしょうか。

大体は各病院にテンプレートの継続指示があったりしますが、そういった指示を出す際の注意点などがここに書かれています。

レジデントノートの月刊は肝心な特集テーマのボリュームがあまり多くないのであまり好きではないのですが、これはそのボリュームで有益でした。

 

 

②救急外来

さてお次は救急外来編です。

1. 救急外来 ただいま診断中

こちらも有名な本ですね。

僕が研修医1年目の時は4月はAmazonで在庫切れだったのを覚えています。(2021年もそうだった?)

この本の何がいいかというと、代表的な激しめの症状・疾患への基本的な考え方が語り口調で書かれていることだと思います。

特に初めの当直では、目の前に患者さんが搬送されてきても「結局のところ何をすればいいの?」というところから分からないと思います。

まずは○○を否定しよう→具体的には病歴で〜〜ではないか、診察で××がないかをみる!

って感じで書かれています。

ただしこれ、1つの症状に対して20〜50ページほどあり、救急外来でサッと読みながら使えるものではないのが注意です。

もちろん少し慣れてきた頃に病歴聴取で抜けがないかをサッと確認する程度には使えますが、初めのうちは空いた時間に通読するものだと思います。

また、「激しめ」のものが書かれていると述べたのは、転倒後のちょっとした創の処置や過換気など、よく見るけども命には関わりにくいようなものは書かれていません。

ちなみに、坂本先生の著書は他にも何冊かありますが、これ一冊読んでいれば他は似たようなことしかゴニョゴニョ…

 

患者さんが来る3分前にサッと読めて最低限の流れをカンニングできるものが↓のものです。

2. 京都ERポケットブック

こちらは「はじめの5分でやることリスト」なるものが各主訴に書いてあり、ひとまずこれをやればいいのか、という安心材料にはなります。

また、これのもう1つの特徴として「特殊分野編」があり、創傷処置、熱傷、皮膚科救急、整形外科救急(レントゲンの正常像や代表的なX線撮影方法一覧などもあります)などまでカバーされており、適度にイラストなどが散りばめられており目にも優しい(?)です。

ただし、あまり具体的な薬剤名や投与量までは書かれていないのが欠点です。

なので、研修医である程度やってみろ、という感じの病院ではこれ一冊では心許ないですね。

 

3. 当直医マニュアル 2022

1冊でかなりの範囲をカバーしており、かつ具体的な処方例まで載っているのがこちらです。

ただし、研修医の裁量は病院ごとにだいぶ違うと思われるので、一概におすすめはできない気もします。

同等のカバー範囲の救急本は他にもありますが、この本は1000ページ近くありながらポケットサイズである点が評価できます。

数あるポケット本の中でも特にミニサイズなので、これに6000円払うの??と躊躇してしまうかもしれませんが値段相応のボリュームが詰め込まれていると思います。

 

4. 救急外来 ここだけの話

これは完全にプラスαの本ですね。

各診療科の「そうそう、それ気になってた!」と思うものや、「いわれてみれば気になる」みたいな項目がたくさん載っています。

例えば、「肺塞栓の、腎機能障害を認める場合の適切な診断方法は?」、「ビタミンB1は救急外来でいつ、誰に、どれだけ投与するのか?」など

慣れてきた頃に読むといいと思います。

 

5. 骨折ハンター

研修医であれば救急外来は避けては通れないですよね。

そしてどうしても転倒や外傷などでレントゲンは撮ります。

国試で出題される骨折の画像って誰が見てもわかるようなものですよね、確か。(すいません覚えていません笑)

でも救急外来を受診される方って、「結構痛がっているけど骨折線はよく分からない」というシチュエーションが多く、派手にボキッと折れていることの方が少ない印象です(3次救急なら別かもしれませんが)

例えば足を階段で足を捻って受診した方。まぁとりあえず足関節のレントゲンは撮るとしても、どこを見ればいいの?ってなりますよね。

しかも足を捻っただけでも、実は場合によっては足関節だけ見ていては見逃す骨折があったりします。そういったものがここに書かれています。

個人的には内科志望(というか非整形外科志望?)であれば、これ一冊以上のことはいらない気がします笑

400ページ近くありますがこの著者である増井先生の本はとても読みやすく、また画像が多いので実はそこまで読む量は多くないです。

 

6. レジデントノート増刊号 骨折を救急で見逃さない!

個人的に骨折の画像診断は興味があったのでこれも読みました。

「骨折ハンター」と重複する内容もありますが、こちらにしか載っていないものもありました。

また、初期研修医向け、後期研修医向け、救急指導医向け、などとレベル分けされているためドリル感覚で読影ができます。

 

7. ブラッシュアップ 急性腹症 第2版

腹痛も救外でたくさんみます。

救急外来ただいま診断中!でも腹痛を扱う項目はありますが、意外と20ページ程度しか割かれていません。

これは腹痛に特化したものであり、コモンな急性虫垂炎や急性膵炎に始まり、大網捻転や腹膜垂炎などのあまり有名でない疾患まで取り扱っています。

 

8. 心電図ハンター

こちらは「胸痛/虚血編」と「失神・動悸/不整脈編」の2冊あります。

どちらもかなり薄く、骨折ハンター同様読みやすいです。

「非循環器医が見落としてはならない心電図」について取り上げられています。

なので、ここまでわかったら即循環器コール、その後の判断は循環器科に委ねる、というスタンスのものが多い印象です。

研修医になりたての頃はいろんな分野を自分で判断できるようになりたいとも思っていましたが、やはり餅は餅屋で、うまく専門家に繋げることの大事さを救急科ローテで学びました。

個人的には全研修医が読むべきものとも言えるくらい好き(なだけ)なのですが、研修医はST上昇だけわかればいいのではないですか?と言われると初期研修医である自分も返す言葉がないので緑にしておきました。

ちなみに、これよりももっと易しい本はないのですかと聞かれたら「レジデントのためのこれだけ心電図」をおすすめしています。

 

9. 高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス

意外なことに、身体診察をそこそこちょうどいいくらいに(?)取り上げた本って少ないんですよね。

身体診察で有名なものは挙げるとするとサパイラマクギーなどの分厚い本ばかりです。

自分は総合診療科志望のため(?)身体診察を特に重視しているためサパイラを持っていますが、他科としてはそこまでは興味ないのではないでしょうか笑

そして、初めての救急外来で「じゃ、診察してみて」と言われても結局何をすればいいの?って感じですよね。

自分も初めての救外対応の主訴はめまいでしたが、感度/特異度などを考慮した診察の優先順位なんて気にしたことなかったのでかなり長々と診察したのを覚えています。

もちろん診察を適当にskipしてもいいというわけではありませんが、毎回同じ診察を行なっていると「その診察は何を疑ってしたの?」と言われてしまうこともあります。

もしくは「○○徴候がなかったらどれくらい否定的なの?」といったことは自分で診察してても気になってくると思います。

そんな時にサッと読めるものがこちらです。さまざまな身体所見の感度特異度などが表に纏まっており、非常に有用です。

ぶっちゃけ上級医は血液検査とCTなどの画像検査などで多くを判断していることが多い気がしますが、やはり身体診察はタダで多くの情報が得られるし、検査結果が微妙な時の判断材料として効果を発揮します。

ちなみに、診察診察!!!と張り切っているとバイタルサインを忘れることがあります(マジで)ので、何よりもまずはABC+バイタルサインということは忘れないでください、自戒も込めて笑

この本は心不全や脱水、意識障害、せん妄などの症候別にわかれていますが、鑑別診断が浮かんできた時の身体診察としては「身体診察 免許皆伝」でしょうか。こちらは「○○を疑った時に意識する身体所見」といった疾患別にわかれています。個人的には好きですがAmazonの評価はイマイチですね笑

 

 

 

語り始めたら止まらなくなりそうなので、ひとまず病棟編と救急外来編で今回は終わりにしたいと思います。

次回以降、画像診断編や各診療科編、感染症編などで続編ができたらと思います。

皆さんの参考になれば幸いです。