USMLE受験生の日記

研修医2年目(114回勢)です。ただのブログに終わらず、有用な情報を発信できたらと思っています。USMLE、臨床推論、国試、その他日常について書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

研修医生活 おすすめ本(画像診断編)

こんにちは。

勢いが消える前に画像診断編に早速取り掛かかりました。

 

今回は画像診断です。

研修医生活を終える上で必要なもの+αという視点で紹介していきます。

書き終えてから思いましたが、わざわざ画像診断の勉強のための本で必須と言えるものなんてほとんどありませんでした。

ので、後半は僕の趣味に近いです。笑

 

ちなみに、骨折に関しては病棟・救急外来編で紹介した2冊がお薦めです。

medtommy.hatenablog.com

ではいきます。

 

■全般的におすすめ

1. レジデントのためのやさしイイ 胸部画像教室

まずは定番です。

とにかく易しく・読みやすく、情報量もちょうどいいです。

呼吸器内科ローテ前に読んでおけばだいぶ抵抗がなくなると思います。

というか多分これ1冊読んでおけば胸部レントゲンに関してまず怒られるようなやらかしはしないと思います笑

ひと昔前は「フェルソン 胸部X線写真」が定番的な存在だったようですが、やさしイイシリーズの方が圧倒的にわかりやすいです。

 

1'. レジデントのためのやさしイイ 呼吸器教室 第3版

これは画像診断ではありませんが紹介させてください。

1番の本の姉妹本というか親子本というか、画像に限らない呼吸器全般の本です。

2冊を読むことで相補的に働くので、買うなら2冊とも買うことをお薦めします。

これもとてもわかりやすいです。

 

2. やさしイイ 胸部画像教室 実践編

 

おい、似たようなもの何冊あるんだよって感じですかね笑

これは2021年に発売された新しいものです。

ひたすら胸部X線100枚を見て所見を拾い上げる本です。

診断は?とか、異常は?という問題形式というよりも、

なんの書き込みもない胸部レントゲン写真1枚で1ページ使われており、撮影条件・横隔膜の高さ・骨軟部陰影・気管の偏移などを自分で判断し

次のページを見るとそれらの項目のそれぞれの"答え(撮影条件:立位正面、横隔膜の高さ:正常範囲など)"とその画像の患者さんのCT画像と共に解説があるというスタイルです。

実臨床でもできるトレーニングではあるので、あまり胸部レントゲンをしっかり吟味してレクチャーなどしてくれる上級医がいない方向けな気がします。

 

3. 画像診断に絶対強くなる ワンポイントレッスン

この2冊はレジデントノートの連載コーナーを書籍化したものであり、「ヘェ〜」という内容もあるので同期に話したくなるようなことが書かれています。

ただしあくまでワンポイントなので、ちょっとしたトリビアやピットフォールが羅列されているイメージです。

なのであまり系統立てて勉強する本ではありません

 

4. 画像診断を学ぼう

なにこれ?見たことないよ?と思われるかもしれませんが名著だと思います。

1冊のカバー範囲が広く、かつ内容の深さも十分すぎるほどです。

頭部、頸部、胸腹部はもちろん、骨折や脱臼などの整形外科領域、異常石灰化や骨密度の低下などの異常所見単独で1章設けたりと贅沢な1冊になっています。

海外の本ですが、あの翻訳本独特の読みにくさ・不自然な日本語はほとんど見られません。

空き時間に読むものとしては、1番と4番だけで良いのではないかとも思います。

 

5. 画像診断ドリル

レジデントノートの増刊号です。

基本的にレジデントノートの増刊号は良い本が多い気がします。

頭部、頸部、胸部、腹部、整形外科、チャレンジ問題という構成になっており、それぞれクイズ形式になっています。

必須の知識ではないかもしれませんが、全分野でレベルが高すぎず低すぎず、非常に勉強になりました。

 

6. CT読影レポート, この画像どう書く?

これは2019年11月に発売されたものです。

発売当初はAmazonで売り切れ期間があったような記憶があります。

タイトルからわかる通り、放射線科レポートっぽい所見の書き方が載っています。

240ページと画像診断本の割にはページは少なく、しかも頭部、胸部、腹膜,肝胆膵脾、泌尿生殖器、腸管、血管,血腫、リンパ節をカバーしています。

各章で初めに解剖の復習もあるのでこれ一冊でも十分完結した勉強ができると思います。

 

 

さて正直なところ、胸部以外の各領域の画像診断で研修医生活にちょうどいいもの(=赤字で紹介できるもの)はないのが現状です(多分)。

それを踏まえた上で、各領域で一応紹介していきます。

 

■頭部

7. 頭部救急のCT・MRI

タイトルの通り、頭部の中でも救急疾患に特化したものです。

研修医ならば頭部画像は救急外来で逃げられないので一応載せておきます笑

救急がテーマなので変性疾患は載っていません。

画像のクイズではなく疾患別にTipsが記載されています。

脳梗塞はⅥ章ですが、脳梗塞だけで150ページ近く割かれているのがすごいですね。

 

8. 画像診断2018年増刊号 頭部の画像診断のポイント

月刊誌の「画像診断」の増刊号です。

月刊誌あるあるかもしれませんが、増刊号はハズレが少ない気がします。

こちらは所見から鑑別疾患が羅列されています。

造影でリング状濃染をきたすもの、というと国試的にはメタ、膠芽腫、脳膿瘍と覚えますが、ここには他にも9つ鑑別疾患が載っていたりします。

研修医にここまで求める上級医は少ないと思うので、神経内科や脳外科、放射線診断科志望などでなければまず不要かなと思います。

(僕は画像診断が好きなので買いました)

 

9. 神経内科疾患の画像診断 第2版

めっちゃ分厚い辞書です。

これも神経内科放射線志望以外は不要だと思います。

なにそれ?みたいな疾患までカバーしています。

完全に趣味です笑

 

■胸部

10. 誰も教えてくれなかった 胸部画像の見かた・考え方

1番を読んでからがおすすめです。

1番の本を読んでなんとなくわかったような気でいたのですが、これを読んで「まだこんな深い世界があったのか〜」ってなりました笑

完全にプラスアルファの内容ですが、ここまで読み切ると胸部レントゲン読影が楽しくなります。

 

11. CTパターンから理解する 呼吸器疾患(呼吸器志望なら緑

胸部CTに特化している本です。

びまん性粒状影、広義間質を主座とする病態、びまん性すりガラス陰影などそれぞれの画像パターンから多くの鑑別疾患とアトラスが記載されており、8番の本の呼吸器疾患バージョンといったところでしょうか。

胸部画像診断は分厚い本がたくさんありますが、これは500ページであり比較的コンパクトです。

呼吸器志望であればおすすめです。

 

12. 画像診断2021年11月号 なぜによくわからない間質性肺炎―疑問と悩みにお答えします― 

まさに全研修医が一度は真剣に勉強して嫌になる間質性肺炎を取り上げている号です。

「分類やパターン分けにはどんな意味があるの?」、「どうだったら間質性肺炎?そもそも間質性肺炎ってなに?」

といったテーマで書かれており、こちらは増刊号ではないので薄く、読みやすいです。

もっと詳細に書かれているのが増刊号である「解剖と病態生理から迫る呼吸器画像診断」です。

 

■腹部

13. ここまでわかる急性腹症のCT 第3版

7番の腹部バージョンって感じです。

表紙がかなり古臭いのですが、一応2018年発売です笑

急性腹症をきたす疾患を取り扱っているので消化器に限らす大動脈、泌尿器、産婦人科領域までカバーしています。

疾患というかジャンル別にケースが分かれている感じなので、空き時間に読むタイプです。

 

14. レジデントのための腹部画像教室

系統としては1番と同シリーズにあたるのかもしれませんが、著者は違うので毛色が少し違います。

液体貯留、消化管拡張、脂肪組織の乱れ、など、所見ごとに解説、鑑別疾患などが記載されています。

画像を見て考えながら参考にするのはこちらが最適かなと思います。

ちなみに小児版もあり、一応読みましたが、小児の腹部画像を見る機会がそもそもないためあまり役立っている実感が湧きません…。

 

15. 画像診断2021年 増刊号 ビギナーのための腹部画像診断

Q&A形式でいろいろな疑問への回答が載っています。

例としては

・肝内に多発する低吸収域をみた時の鑑別はなんですか?

・病的なpneumobiliaはどのように判断したら良いでしょうか

胃潰瘍や十二指腸潰瘍はCTで見えますか?

など。

必須の知識ではありませんが、ふと疑問に思うようなことがたくさん書かれておりおすすめです。

 

■その他

16. 画像診断2019年増刊号 救急疾患の鑑別診断のポイント

タイトルの通り救急疾患の画像診断です。

特に領域は定まっていませんが、ほぼ胸腹部領域の所見別に11章に分かれています。

13番の本の親戚のような本です。

脈管ガス像、消化管内の高吸収、脈管外ガス像、脂肪織濃度上昇、高腹膜軟部組織の異常陰影、などがテーマになっています。

 

17. 画像診断2020年増刊号 似て非なる画像“The mimickers”の鑑別診断

症例紹介→診断→この疾患のmimicker(よく間違われるもの・紛らわしいもの)はこれ!

って感じで紹介されています。

臨床推論好きにはたまらない構成となっていますが、疾患の内容がややマニアックなものもあるような気がします。

 

18. MRIに絶対強くなる 撮像法のキホン Q&A

最後の最後に緑としましたが、

MRIって結局なにしてるの?

T1とかT2とか拡散強調像とかあるけど、何が違うの?

ADCとかSWIとか他にもあるけど結局なんなの?

という疑問に答えるものです。

MRIの原理というと原子とかスピンとかから始まってて一瞬で嫌になるのですが、そういう煩雑なのはサッと簡単に済ませられているのが良いです。

 

 

 

以上になります。

半分僕の趣味が入ってしまいましたが、どれも読んでて面白いものばかりです。

全く興味のない方は1番のみで良いのではないでしょうか笑

 

 

研修医が始まって頭部の本が欲しい、救外の画像診断の本が欲しい、ってなったときにまた参考になれば幸いです。

研修医生活 おすすめ本(感染症編)

こんにちは。

前回の投稿から勢いがなくなる前にこちらも書いておこうと思い早速感染症編も始めました。

 

研修医になってとりあえず勉強しておくと高確率で自分を助けることとして

・輸液

・抗菌薬

・画像読影

かなと思っています。

前回少し輸液の本も紹介したので、今回は感染症でおすすめの本について語らせてください。

前回同様、必須〜おすすめあると便利、プラスαで色分けしています。

ちなみに、この記事は抗菌薬なんて全くわからんって方を対象にしていますが、後半は研修医1年目が終わる頃の先生方にもお薦めできます。

感染症は特に理解がまだまだすぎることを自覚しているのですが、30冊ほど読んだ中で良いと思っているものを抜粋して感想をグダグダと書いてみたので、どなたかの参考になったら嬉しいなぁくらいの気持ちで書きました笑

 

 

世に出回っている感染症の本の多くは、「抗菌薬使用の原則!」や、「抗菌薬・原因微生物・感染部位のトライアングルを意識!」や、PK/PDや抗菌薬ごとの作用機序、適応のある菌種などがまとめてあり、その後にケーススタディが載っているのが多いと思います。

最初は「よくわかんないけど、こういうのが大事なのかぁ」とぼんやりと思っていた程度で、振り返ってみると、最初はごちゃごちゃ考えずに最低限のことを覚え、じっくり噛み砕いていった時に初めてそれらの重要性がわかってくる、というのでいいのではないだろうかと考えています。

というか、普通はそういう順番で理解していくのではないかとさえ思ってしまいますが、いかがでしょうか笑

 

初学者の段階で抗菌薬ごとに

○○系は主に××菌に効きます。ちなみに、〜〜菌にも効きます。##への移行性も良いです。□□炎に使われることもあります。あれにもこれにも〜〜

と書かれていても、じゃあ××が起因菌として多い△△炎には○○系を使うの?##の感染症に第一選択で使うの?□□炎への処方例に載っているかな?と調べてみると、複数の処方例があるにも関わらず○○系は処方例に載ってすらおらずにウンザリ、みたいなことありませんか?(僕は腐るほどあります笑)

主にグラム陽性菌をカバーしています

と書いてあるのを見てナルホドと思っても、大腸菌もカバーしていて尿路感染症にも使われていたり(現時点で医師の方は何の薬かわかりますよね)

多くの抗菌薬の本は、「この抗菌薬を使いたい。どんな患者さんなら投与したら効くと思われるか?(≠投与すべきか?)」と考えるには最適な記載順序になっているように思えます(そんなシチュエーションはないと思いますが)。

やたらとbroadな薬を使うのは良くないことはわかるし、PK/PDとか濃度依存だとかも大事だとは思う。

けども、いざ入院患者さんが例えば腎盂腎炎っぽいというシチュエーションに出くわしたとき、抗菌薬は何を使うのか?根拠は?と考えた時、それらの知識から最適解に辿り着けるほどにはなれませんでした。

なんとか抗菌薬ごとの説明を読み終えてから最後の疾患ごとのケーススタディに辿り着く頃にはすでにお腹いっぱい。ペニシリン系なんて「一番最初に読んだな〜、有効な菌は何が書いてあったっけ?ペニシリンと言っても色々種類があったなぁ…」ともはや記憶の彼方だったり…笑

 

そんなわけで、感染症科やこだわりのある先生を除いて、多くの医師から えっ? と思われないようなスタンダードな抗菌薬選びをまずは「覚え」たいと思い色々探しましたが、こんな考えはダメなのでしょう、こういったニーズを満たす本は多くなかったのです笑

なので、抗菌薬の本を執筆している先生方からは怒られること間違いなしかもしませんが、まずは疾患→抗菌薬の対応を覚えてしまい、その後にそのチョイスや投与間隔の理由を勉強する、という方が頭に残りやすいと思いました(もちろん選択の理由まで理解してから選択するべきです)。

ただし、覚えるのであれば盲目的に「疾患→抗菌薬」と覚えるのではなく、疾患→頻度の高い起因菌が○○だから△△」と、原因菌まで覚えてください(これは絶対)

ここまで考えるクセをつけておくと、一言に肺炎と言っても市中肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎、医療・介護関連肺炎、誤嚥性肺炎、それぞれで考えることがあるので知識も短絡的なもので終わらないと思います。

おそらく上級医の先生の頭の中には疾患→抗菌薬のシャント回路が出来上がっていると思うのですが、それは疾患→理由→抗菌薬という正式回路も頭に入っている状態でのシャントであって、それを研修医が理由をすっ飛ばして暗記だけして使いこなした気になると、どこかで必ずヤバいやらかしをすると尊敬している先生から教わりました。

まぁつまり受け売りなんですが、実際、先生からなんでその抗菌薬にしたの?と聞かれることは必ずあるので理由を言えるに越したことはありませんよね。

 

ちなみに、なぜこの疾患にこの抗菌薬はダメなのか、なんて一般的に使われないものまで考えていたらキリがありません(もしかしたらあるのかもしれませんが)し、疾患→起因菌→抗菌薬の流れを丸暗記してからより厳密な理由を調べてみると自然と他の薬が不適な理由がわかることも多いです。奇を衒ったチョイスの是非を考えるのは面白いですが、そういう高級な話は後でいいのではないでしょうか…笑

複数のチョイスが全て無効なシチュエーションなんてそんなに多くないので、その時に調べればいいではないか、と考えると気が楽になります(これもダメかもしれませんが笑)

 

めちゃくちゃ長く語りましたが、そういう視線でみたときにシンプルに書いてあるのがこちらです。

1. 感染症診療の手引き

「えっ、これが最初?」と思われるかもしれません。あまりこれが紹介されているのを見ないので。笑

Ⅳ章の臓器別のマネジメントがシンプルにまとめてあり、かつ、原因微生物として頻度が高いもの、複数の抗菌薬のチョイスが投与量などまで載ってあり、とりあえず覚えるべきものが濃縮されています。

しかも安く薄く、購入者はPDFも無料でダウンロードできるので、白衣のポケットに入れていても嵩張らないし、電子派の方にも対応していて最強です。

ただし、記載されているものはとりあえず一般的に始められる薬であって、培養結果などが出てde-escalation(カバー範囲の狭い抗菌薬に変更すること)する場面では弱いと思いますので、その時はまた勉強する必要はあると思います。

また、これは診断がおよそわかっている時の話なので、診断を考えるのはまた別の話です(簡単な診断のポイントは載っていますが)。

 

ところで、それぞれの薬がどんな薬なのか(作用機序など)知らないまま使うのは流石にまずいです。

そういったものをサラッと読めるのが以下のものです。

なので、2・3番を読んでから1番を買うという順番がスタンダードかもしれません。

僕自身がまだまだすぎて正解がわかりません、すいません笑

 

2. わかる抗菌薬

3. 使いこなす抗菌薬

天沢ヒロ先生の本ですね。

この本は数ある抗菌薬の中でも頻用薬だけにピントを絞っており、かつ、かなりシンプルに記載されています。

これを3回くらい読めば、まずは大まかな抗菌薬のジャンル分けなどを頭の中でできるようになると思います。(3回も?は?無理やろ!と思われるかもしれませんが、かなり読みやすいので2回目以降はサッと読めるはずです)

僕がポリクリが始まった頃(2017年くらい)は「絶対わかる 抗菌薬はじめの一歩」がAmazon売上第1位だったと記憶しています。これは矢野晴美先生の本ですね。

僕自身は医学部4年生の時に「抗菌薬はじめの一歩」を5,6回読み返した後、6年生の時に「わかる/使いこなす」を読んだのでフェアな判定ができないかもしれませんが、わかる/使いこなす抗菌薬の方がよりわかりやすく書かれている印象でした。

あとは、単純に矢野先生のものは2010年発売で流石にちょっと古すぎる不安があります笑

ちなみに「わかる」は2017年発売です。

 

「使いこなす」で天沢先生ご本人がおっしゃっていますが、天沢先生は「使いこなす」の方をメインと考えているようです。しかし「使いこなす」を読む前の共通言語を会得していただくために「わかる」を仕上げたとのことです。

確かに「使いこなす」は「わかる」を読んだ前提での会話が多いです(「わかる」編でも言ったと思うけど〜という文言が多いです)。

それもあって「使いこなす」だけ読んでもあまりピンと来ないと思います。

ちなみに、「抗菌薬はじめの一歩」を読めば「使いこなす」の方だけ読んでもいけると思います。

ただしこれは、病棟でウンウン考えながら見るものではなく、あくまで空き時間に読んで勉強しておくものです。

 

この2冊の知識を持った上で、病棟での業務で持ち運ぶべきものは以下のものだと思います。

もちろん1番の本でも良いのですが、病棟で上級医と議論する場合は以下の本くらいの情報量がある方がベターだと思います。

(医局などでさらに腰を据えて議論する場合はまた別です)

 

4. 感染症プラチナマニュアル ver.7 2021-2022 or サンフォード感染症治療ガイド2021(第51版)

共に有名な本ですね。僕は両方持っていますが、どちらかを持っていればいいと思います。

まずプラチナです。

「プラチナ」の名前の由来ですが、この著者である岡先生が以前勤務されていた東京高輪病院の最寄り?が白金(=プラチナ)だったからとケアネットの動画で岡先生ご自身がおっしゃっていました。

いきなり豆知識から始めちゃいましたが、ちゃんと語ります。笑

まず、日本発の本なので使いやすいです。

単純な疾患→抗菌薬の対応表ではなく、疾患の各論的な知識もふんだんに詰め込まれています。

また、経験的治療(empiric therapy, エンピリックな治療とかいいます)→特異的治療(起因菌が判明した後の治療. definitive therapyとも言います)の流れも記載されており、とても実践的です。

オーグメンチン(AMPC/CVA)とサワシリン(AMPC)の合わせ技をオグサワと言う、ということをここで知りました。オグサワの発祥はどこなんでしょうかね。

次にサンフォードについて、と思いましたが、プラチナと比べて〜が連続したので、プラチナと比較して行きたいと思います。

 

プラチナと双璧をなすポケット本がサンフォードというイメージです、僕の中では。海外版プラチナって感じですね(全然違うだろって方、すいません)。

1969年から刊行されており、プラチナはたしか2015年くらいに誕生しているので歴史はサンフォードの圧勝です。

網羅している病原体・抗菌薬の数はサンフォードの方が上でしょう。しかし日本の普通の臨床現場で出会うような菌はプラチナで十分なのではないでしょうか

サンフォードは、日本ではほとんど起因菌としてまず挙げないような真菌(CoccidioidesやHistoplasmaなど)の治療までしっかりと真菌ごとに載っていますが、多分日本では必要ではないですよね。

また、サンフォードは様々なシチュエーションに対する抗菌薬がひたすらに載っている本ともいえます。裏を返せば抗菌薬以外の情報量はプラチナの圧勝です。

ちなみに、そういった理由で最初の愚痴?で登場した「複数のチョイスが全て無効なシチュエーション」ではサンフォードですね。

まぁ、そんなシチュエーションでは普通はICT(Infection Control Team)へコンサルトしたりするので、研修医に意見を求める上級医はいないので研修医という立場に限れば必要ないかもしれません…笑

サンフォードを日本で使用する場合ならではの弱点として、「セフメタゾール(cefmetazol; CMZ)」が記載されておりません

CMZは日本独自の抗菌薬とのことで載っていないそうです。

対ESBL産生菌の先鋒的存在であるCMZが載っていないのは正直痛いです。

あとは日本にはない抗菌薬や規格(錠剤の用量など)も多数記載されており、現場で使いにくいことが多いのがサンフォードの弱点ですね。

 

というわけで総合すると、少なくとも日本の病院で使い勝手がいいのはプラチナだと思います。

ただし上の先生のなかには プラチナ?は?何それ? みたいな方もいらっしゃいます。

そういった先生方はサンフォードを好んでいる気がします。(もしくは, 抗生剤は広域使っておけばいいだろというパターン)

 

 

5冊だけの紹介でなんですが、正直なところ研修医でこのあたりを読んで・持っていれば全く問題ないと思うのは僕だけでしょうか…笑

確かにICUの重症患者や周術期管理などはカバーできていないかもしれませんが、それを全研修医が別途本を買って勉強するのは現実的とは思えません。

何より、感染症学は面白く、他にも色々と読んで勉強しましたが、研修医になってその知識を求められたことは皆無でした(当たり前か)。

というわけで、別に感染症は興味ない、常識だけ知っていればいいという方は以上のものでいいのではないでしょうか。

ここからは、もうちょっと知りたいという方向けです。

とはいっても、内科に進むのであれば持っているべきと個人的に考えているものは緑色にしております。

 

5. レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版

感染症の権威(と、僕が思っている)青木眞先生の本です。2020年に第4版が出版されましたね。

レジデント本の中では13,200円とかなり高額ですが、これは内科に行くのであれば持っているべきものだと個人的には思います。

実物を見ればわかりますが、1700ページほどあるため決して通読するものではなく、巷のレジデント本で調べてもわからないものを調べる辞書として使うものです。

ページ数からもわかる通り、情報量がダントツです。

僕の研修病院のみならず、他病院に研修に行ったりしても上級医の先生の本棚にあるのをよく見ました。

 

6. 抗菌薬の考え方, 使い方 ※2022年3月に第5版が出版されるようです

有名な岩田健太郎先生の本です。ダイヤモンド・プリンセス号の一件で世間一般の方にも知られたのではないでしょうか。

5の本は流石に高くて買えないという方も、これなら買えるのではないでしょうか。

個人的には6000〜7000円くらいしてもいいのではないかという情報量な気がします。

もちろん抗菌薬の勉強で最初に読んでしまうと間違いなく挫折するのですが

デフォルトの抗菌薬選択はわかってきたけど、もうちょっと踏み込んで勉強したい

という方にはうってつけの本だと思います。

僕は上級医がこれを読んでいるのを目撃しました笑

基本的に語り口調で書かれていて読みやすいですが、550ページほどあるので最後まで読み切るのはなかなか大変だと思います。

僕は断片的に10回くらい読んでいますが未だに読み切った気がしません笑

 

7. 抗菌薬ドリル

たった2年の経験ですが、抗菌薬治療は「一般的な抗菌薬選択でスッと治る」か、「熱源が分からないままなかなか改善せず、ああだこうだ議論しながら抗菌薬を広域にしたりしていくうちに抗菌薬変更のタイミングとずれて改善し、あれはなんだったんだ?と思いながら元気に退院していく患者さんを眺める」の2パターンは意外と多かったように思います。(後者はそもそも感染症だったのか怪しいですが)

その間くらいのもの、つまり「広域で開始して徐々に改善してきてるけどもう少し時間がかかりそうで、培養結果も出た。患者さんの状態も比較的良い。」みたいなとき。果たしてこのまま広域でいいのか、どこまでde-escalationするか、と、抗菌薬選択の妥当性を理詰めで吟味する先生は、少なくとも僕の周りにはほとんどいませんでした。

そして色々勉強したはいいけど、抗菌薬の決定権は研修医には基本的にはないですよね。

そういった吟味はやっぱり自分で考える方が圧倒的に記憶に残ります。

そういったトレーニングをまずは一人で行いたい方はおすすめです。

この本は抗菌薬選択に限らず、ドレナージなどの処置も含めた感染症の治療全般を扱っているイメージです。

ちなみに抗菌薬の狭域化に関して特化した問題集は「抗菌薬選択トレーニング」ですが、感染症診療全般を見るという意味で抗菌薬ドリルの方がベターだと思います。

 

8. 感染症内科 ただいま診断中!

救急外来で有名なただいま診断中シリーズの感染症バージョンです。

こちらは抗菌薬の議論はあまりなく、症候に対するアプローチや主な検査について勉強できます。

例えば、

・血液培養が1セットで20ml採取するのが基本だが、10mlと20mlではどれくらい検出の精度が変わるのか?

・術後患者の発熱は、どういったものは精査するべきか

CRPや周辺のバイオマーカーの解釈・利用方法など

・腹水患者のアプローチ

などなどです。

治療というよりも診断までの過程を掘り下げて勉強したい方向けです。

まぁこれも一応5番の本が大体カバーしていると思いますが笑

ちなみにこれも500ページ弱あります。

感染症の本は分厚いものが多いですねぇ…笑

 

9. 市中感染症診療の考え方と進め方 第2集

IDATENという感染症セミナーを開催している団体?の本ですね。

IDATENというと、2・3番でお名前を出させていただいた矢野先生もインストラクターを務めていらっしゃると記憶しています。

こちらは臓器別で各感染症へのマネジメントがレクチャー形式で記載されています。

市中肺炎のマネジメント、と言ってもなんとなく各種培養をとって、とりあえずCTRX+AZMなどで始めて、培養結果が出たらde-escalationして、、、とマニュアル的な対応をする前に、そこで一度立ち止まってちゃんと1つ1つ色々考えてますか?と上級医から聞かれているような本です、読んでいる時は。笑

ちなみに、IDATENはInfedtious Diseases Association for Teaching and Education in Nipponの略だそうです。(ここに記載するために調べて知りました笑)

 

10.  感染症クリスタルエビデンス

プラチナと同じ岡先生の著書です。

これは完全にプラスアルファですね。

敗血症の管理にEGDTは有用か?、尿道炎はクラミジアと淋菌の両方をカバーするべきか?、血培で黄色ブドウ球菌が検出された場合、どこまで感染性心内膜炎を検索すべきか?など、多くの医師がタイトルを見たらちょっと気になるようなことが盛りだくさんです。

 

11. がん患者の感染症入門

8番の本と同じ、伊東先生の著書です。

研修医である以上、がん患者さんを見る診療科は必ず回りますね。

そういった担癌患者さんの発熱を見た時、注意すべきことは僕はあまり知りませんでした。

発熱性好中球減少症くらいかなと思っていましたが、もっと色々と考えるべきことがあるのだなと思わされる本です。

 

12. J-IDEOhttp://www.chugaiigaku.jp/item/list.php?tag=J-IDEOhttp://www.chugaiigaku.jp/j_ideo/

J-IDEOは岩田先生を編集主幹とした感染症雑誌で、奇数月に発売されています。

もはや「こういう雑誌」と一言ではいえないのですが、色々なテーマが連載形式で載っています。

終わってしまいましたが忽那先生の道場破りシリーズが好きでした。

既述のIDATENのカンファレンスも載っていました。あれってもう終わっちゃったのかな…?

渡航医学B級情報局も読んで無理やり海外旅行している気分になったりしています。笑

抗菌薬選択チェックメイトへの道はしばらく休載されていますが、再開はされるのでしょうか…(もはや紹介というが呟きですね)

 

 

 

こんな感じでしょうか。

プラチナやサンフォードは通読というよりもかいつまんで利用している使い方をしているのでもしかしたら言葉足らずな点があるかもしれません。

気づいた点は今後も更新していきたいと思います。

感染症について書くと不明熱に言及したくなるところを抑えて書き切りました笑

少しでも参考になれば嬉しいです。

次回は画像診断編を予定しています。目標は3月上旬までに投稿です。

では。

 

研修医生活 おすすめ本(病棟・救急外来編)

お久しぶりです。

第116回国試も終わりましたね。

116回受験組の皆さまはお疲れ様でした。

Twitterでも色々と話題になっていましたね笑

 

僕はというと、研修医になってから全く記事を書いておりませんでしたが、特に病んだわけでもなく平和に、同期に恵まれて過ごせておりました。笑

にしても自分が初期研修医として過ごした2年間は丸ごとコロナ禍に被っており、ノーマルな東京を満喫することは叶いませんでしたね。

おそらく医師として働く人生の中で一番暇であるはずの2年間がこんなことになってしまい非常に残念ですが、学生時代に被って旅行に行けなかったよりはマシですね。

そして来年度は専攻医として勤務します。

診断学などが好きなのでそういったものに精力的に取り組んでいるところで修行できればと考えていますが、働き出してわかったのですが、「(特に不明熱で)診断に悩んだら○○科」といった内科が各病院にあるっぽいということがわかり、将来はそういった診療科に行くのもありかもしれないと考え初めているところです。

 

そして間もなく研修医生活が終わってしまいますが、この時期だからこそ「今も使っている」、「振り返ってみるとよかった」と言えるものを研修医目線でまとめておこうと思い、記事にまとめておこうと思いました。

あくまで僕が使ったものの中での話ですが、一応2年間+学生時代に100冊近く読んだので、研修生活に向けて買った方がいい本などで参考にしていただければと思います。

 

色々な診療科の本を買って勉強したので、今後は各診療科ごとにも紹介したいと思います。

必須〜おすすめ」、「あると便利」、「プラスα〜おまけ」の3つに分類してみました。

また、僕自身が内科志望であるため主に内科の本で構成されています。

 

では今回は病棟編と救外編をご紹介します。

また、今後適宜更新していけたらと思います。

(最終更新 2022年2月18)

 

①病棟全般

まず初めにどの病棟でも日常勤務で役に立つものをあげてみました。

内科系であれば全診療科をカバーしているものばかりなのでどうしてもここのものは高いです。

 

1. 内科レジデントの鉄則

言わずと知れた名著ですね。

読みやすさ・量・網羅度を総合的にみると、やっぱりこれが一番かなと思います。

「A 当直で呼ばれたら」、「B 内科緊急入院で呼ばれたら」、「C 入院患者の管理で困ったら」の3部構成になっていますが

AとBは実質同じというか、どちらも救急外来でも活躍すると思います。

この本はかの有名な聖路加国際病院発の本なのですが、たしかここって研修医(1年目だっけな?)は当直は病棟対応のみなんですよね。

ただ、多くの病院は当直=夜間の救急外来±病棟対応だと思うので、当直時はA+B、日中の勤務としてはA〜C(主にC)がカバーしていると思われます。

ショック患者などで避けては通れない「ガンマ計算」についてこれで初めてしっかり勉強する方が多いのではないでしょうか。

初期研修医が昇圧薬の速度を調整することはあまりないかもしれませんが笑

 

 

2.ホスピタリストのための内科診療フローチャート

総合診療界隈では超有名な飯塚病院の清田先生、丸太町病院の上田先生、市立奈良病院の高岸先生という豪華すぎるメンツによる本です。

タイトルの通り、内科全般の範囲を診断から治療までの流れがフローチャートで書いてあるだけでなく

そのフローチャートの詳細な説明(根拠の論文も詳細に記載されています)が載っています。

主に疾患別にまとまっているので、「○○病かな?」と思ったときなどに効果を発揮します。

ややお高いのですが、中身の濃密さを見ればむしろ安いくらいなのでは、と思います。

個人的には抄読会などの当番になった際などにここで へ〜! と言ってしまうようなところを見つけ、その根拠の論文を発表することで何度か乗り切りました。笑

 

 

2' 総合内科病棟マニュアル

これの中身の密度は2の下位互換な印象です。

まぁ、こちらは病棟マニュアルなので診断、治療以外のことも取り扱っているため単純な比較は難しいです。

カバー範囲は広いのですが、広すぎるゆえに実用的なレベルまで取り扱えていない印象です。

あと2に優っているのは一応ポケットサイズなので持ち運びはしやすいです(分厚いのであまり適してないけど笑)

 

3. 卒後15年目の総合内科医の診断術

こちらはタイトルの通り、診断メインの本です。

2の本との違いとしてこちらは症候別でまとまっているので、これは診断に悩んだ際に役立つかなと思います。

思わず ヘェ〜 といってしまうことが盛りだくさんなので、診断学に興味がなくても内科志望であれば読むと30分間くらいは面白いかもしれません笑

文章がメインであるため、救急外来などで読みながら診療するには不向きです。

2と3は両方あると良いですが、高いのでどちらか1つ、というのであれば2の方がいいかなと思います。簡単な記載ですが治療まで書いてあるので。

 

4. 内科病棟・ERトラブルシューティング

こちらは2の上田先生と高岸先生の著書ですね。

腹痛や胸痛などについても書かれていますが、これは症候の他にも、なんと言いますか

「CPK上昇時のアセスメント」

「輸血閾値

「不眠の対応」

「入院患者の血糖コントロール

といったように、研修医向けの本ではあまり大々的に取り上げられないけども、現場では避けては通れないことについても書かれています。

腹水、胸水の検査項目などで漏れがないかは僕はこれか2'で確認しています。細かいですが笑

 

5. 病棟・ICU・ERで使える クリティカルケア薬

2021年9月に発売されたばかりのものなのであまり使われているのは見ませんが、本当におすすめです。

鎮痛・鎮静薬、循環作動薬、抗てんかん薬などからビタミン剤、脂質異常症の薬までカバーしています。

具体的な投与法・時間や、点滴→経口の切り替え時の用量変更などまで書いてありますので、

イーケプラ(レベチラセタム)を普段内服している方が意識障害で入院となった。点滴に変える時は量はどうする?

などといった時に効果を発揮します。もちろん病棟薬剤師さんや上級医に相談しますが、たまに上級医も知らないマイナーなものがあったりしますので、「この本にはこう書いてます」といった風に使えます。

本屋によっては薬剤師さん向けのコーナーに置いてあったりします。

これは病棟を持つ診療科であればどこでも役に立つと思います。

おそらくこういう系の本でメジャーなのは「ICU/CCUの薬の考え方, 使い方 ver.2」だと思いますが、個人的には見やすさ、使いやすさから負けていないどころか優っていると思います。

 

6. レジデントのための これだけ輸液

国試までの勉強では現場では圧倒的に足りない分野として輸液があると思います。

ほぼ全ての科でオーダーするというのに、なんででしょうね。

なのにも関わらず、輸液の本というと体重の60%が〜、そのうち細胞内液が〜、、、、と、よくある2:1、もしくは8:3:1の図が載ったりしていて初学者からすると正直そんな長々と読んでいられないです(よね?笑)。

大事なのはわかるのですが、それを覚えても救外で看護師さんから「先生、点滴速度どれくらいにしますか?」と聞かれても答えられません。

天才ならば別かもしれませんが、ひとまず救外や病棟で輸液のオーダーをする際に使える無難な知識を最初に持ってきているのがこの本です。

また、クレンメなどの点滴グッズの名前の紹介もあり、マジの初学者向けです。

余談ですが、看護師さんなどは我々医師が医学部時代にクレンメ、サーフロー、スピッツ、などという単語は実習でたまたま教わらない限り知らないということを知らないんでしょう。

4月の何も知らない時期にも「そのスピッツの横のやつ取ってください」、「ルート何Gで取りますか」って感じで声をかけてきます。

(多分)みんなが通る道なので、まずは何も知らない自分が嫌にならないようにしましょう笑(知っていたらすいません)

 

7. シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン 第3版

これは6の本を読んでから読むくらいがちょうどいいと思います。

国試の勉強である程度やったと思う方はこれから始めてもいいかもしれません。

個人的には前半の半分だけ読めばいい気がします。

ちなみにその後のさらなるプラスαとして読むとすれば「体液電解質異常と輸液 改訂3版」でしょうか。僕はこれは本当に細かい機序などが気になった時に読む辞書として使用しています。

 

8. 栄養療法 はじめの一歩

輸液と同様、栄養に関しても国試ではかなり足りない範囲かなと思います。

その割に色々な診療科の病棟で頻繁に「この人いま何カロリー入ってるんだっけ?」、「ラコールは〜」などという会話が多いです。

ラコールだのエンシュアだのいわれても普通の研修医本には全然書かれていません。

ここには簡単な説明であったり、考え方が分かりやすく載っているので、一読の価値はあると思います。

僕はこれを読んで「栄養療法ドリル 」を解きましたが、これはプラスαかなと思います。

ちなみにこれの続編として「栄養療法にもっと強くなる」がありますが、これは読まなくていいと思います。「もっと強くなる」で何を学んだかと思い返してみるとあまりなかったなぁとしか思えないので…。笑

 

9. レジデントノート2021年5月号 病棟指示と頻用薬の使い方

医師の仕事として「病棟指示」や「継続指示」なる指示を出すというものがあります。

これは簡単に言えば「何か小さなプロブレムが起きた時に備えての事前指示」といえばいいのでしょうか。

例えば患者さんが深夜に眠れないと訴えているとき。

夜3時に主治医のプライベートな携帯電話や救急外来で対応中の当直医に「○○さんが眠れないそうですが、どうしましょう?」と病棟看護師さんがいちいち電話しなくてもいいように、あらかじめ「不眠時 ベルソムラ15mg 1錠内服」などのようにカルテに登録しておく。これを病棟指示や継続指示と言います。

もちろん実は不眠ではなくせん妄の可能性もあるので医師が診察するのが望ましいですし、実際に全例医師が診察した上で方針を決定する、という病院の話も聞いたことがありますが、多くの病院はまずは継続指示→解決しなければ当直医に相談、という対応をしている病院が多いのではないでしょうか。

大体は各病院にテンプレートの継続指示があったりしますが、そういった指示を出す際の注意点などがここに書かれています。

レジデントノートの月刊は肝心な特集テーマのボリュームがあまり多くないのであまり好きではないのですが、これはそのボリュームで有益でした。

 

 

②救急外来

さてお次は救急外来編です。

1. 救急外来 ただいま診断中

こちらも有名な本ですね。

僕が研修医1年目の時は4月はAmazonで在庫切れだったのを覚えています。(2021年もそうだった?)

この本の何がいいかというと、代表的な激しめの症状・疾患への基本的な考え方が語り口調で書かれていることだと思います。

特に初めの当直では、目の前に患者さんが搬送されてきても「結局のところ何をすればいいの?」というところから分からないと思います。

まずは○○を否定しよう→具体的には病歴で〜〜ではないか、診察で××がないかをみる!

って感じで書かれています。

ただしこれ、1つの症状に対して20〜50ページほどあり、救急外来でサッと読みながら使えるものではないのが注意です。

もちろん少し慣れてきた頃に病歴聴取で抜けがないかをサッと確認する程度には使えますが、初めのうちは空いた時間に通読するものだと思います。

また、「激しめ」のものが書かれていると述べたのは、転倒後のちょっとした創の処置や過換気など、よく見るけども命には関わりにくいようなものは書かれていません。

ちなみに、坂本先生の著書は他にも何冊かありますが、これ一冊読んでいれば他は似たようなことしかゴニョゴニョ…

 

患者さんが来る3分前にサッと読めて最低限の流れをカンニングできるものが↓のものです。

2. 京都ERポケットブック

こちらは「はじめの5分でやることリスト」なるものが各主訴に書いてあり、ひとまずこれをやればいいのか、という安心材料にはなります。

また、これのもう1つの特徴として「特殊分野編」があり、創傷処置、熱傷、皮膚科救急、整形外科救急(レントゲンの正常像や代表的なX線撮影方法一覧などもあります)などまでカバーされており、適度にイラストなどが散りばめられており目にも優しい(?)です。

ただし、あまり具体的な薬剤名や投与量までは書かれていないのが欠点です。

なので、研修医である程度やってみろ、という感じの病院ではこれ一冊では心許ないですね。

 

3. 当直医マニュアル 2022

1冊でかなりの範囲をカバーしており、かつ具体的な処方例まで載っているのがこちらです。

ただし、研修医の裁量は病院ごとにだいぶ違うと思われるので、一概におすすめはできない気もします。

同等のカバー範囲の救急本は他にもありますが、この本は1000ページ近くありながらポケットサイズである点が評価できます。

数あるポケット本の中でも特にミニサイズなので、これに6000円払うの??と躊躇してしまうかもしれませんが値段相応のボリュームが詰め込まれていると思います。

 

4. 救急外来 ここだけの話

これは完全にプラスαの本ですね。

各診療科の「そうそう、それ気になってた!」と思うものや、「いわれてみれば気になる」みたいな項目がたくさん載っています。

例えば、「肺塞栓の、腎機能障害を認める場合の適切な診断方法は?」、「ビタミンB1は救急外来でいつ、誰に、どれだけ投与するのか?」など

慣れてきた頃に読むといいと思います。

 

5. 骨折ハンター

研修医であれば救急外来は避けては通れないですよね。

そしてどうしても転倒や外傷などでレントゲンは撮ります。

国試で出題される骨折の画像って誰が見てもわかるようなものですよね、確か。(すいません覚えていません笑)

でも救急外来を受診される方って、「結構痛がっているけど骨折線はよく分からない」というシチュエーションが多く、派手にボキッと折れていることの方が少ない印象です(3次救急なら別かもしれませんが)

例えば足を階段で足を捻って受診した方。まぁとりあえず足関節のレントゲンは撮るとしても、どこを見ればいいの?ってなりますよね。

しかも足を捻っただけでも、実は場合によっては足関節だけ見ていては見逃す骨折があったりします。そういったものがここに書かれています。

個人的には内科志望(というか非整形外科志望?)であれば、これ一冊以上のことはいらない気がします笑

400ページ近くありますがこの著者である増井先生の本はとても読みやすく、また画像が多いので実はそこまで読む量は多くないです。

 

6. レジデントノート増刊号 骨折を救急で見逃さない!

個人的に骨折の画像診断は興味があったのでこれも読みました。

「骨折ハンター」と重複する内容もありますが、こちらにしか載っていないものもありました。

また、初期研修医向け、後期研修医向け、救急指導医向け、などとレベル分けされているためドリル感覚で読影ができます。

 

7. ブラッシュアップ 急性腹症 第2版

腹痛も救外でたくさんみます。

救急外来ただいま診断中!でも腹痛を扱う項目はありますが、意外と20ページ程度しか割かれていません。

これは腹痛に特化したものであり、コモンな急性虫垂炎や急性膵炎に始まり、大網捻転や腹膜垂炎などのあまり有名でない疾患まで取り扱っています。

 

8. 心電図ハンター

こちらは「胸痛/虚血編」と「失神・動悸/不整脈編」の2冊あります。

どちらもかなり薄く、骨折ハンター同様読みやすいです。

「非循環器医が見落としてはならない心電図」について取り上げられています。

なので、ここまでわかったら即循環器コール、その後の判断は循環器科に委ねる、というスタンスのものが多い印象です。

研修医になりたての頃はいろんな分野を自分で判断できるようになりたいとも思っていましたが、やはり餅は餅屋で、うまく専門家に繋げることの大事さを救急科ローテで学びました。

個人的には全研修医が読むべきものとも言えるくらい好き(なだけ)なのですが、研修医はST上昇だけわかればいいのではないですか?と言われると初期研修医である自分も返す言葉がないので緑にしておきました。

ちなみに、これよりももっと易しい本はないのですかと聞かれたら「レジデントのためのこれだけ心電図」をおすすめしています。

 

9. 高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス

意外なことに、身体診察をそこそこちょうどいいくらいに(?)取り上げた本って少ないんですよね。

身体診察で有名なものは挙げるとするとサパイラマクギーなどの分厚い本ばかりです。

自分は総合診療科志望のため(?)身体診察を特に重視しているためサパイラを持っていますが、他科としてはそこまでは興味ないのではないでしょうか笑

そして、初めての救急外来で「じゃ、診察してみて」と言われても結局何をすればいいの?って感じですよね。

自分も初めての救外対応の主訴はめまいでしたが、感度/特異度などを考慮した診察の優先順位なんて気にしたことなかったのでかなり長々と診察したのを覚えています。

もちろん診察を適当にskipしてもいいというわけではありませんが、毎回同じ診察を行なっていると「その診察は何を疑ってしたの?」と言われてしまうこともあります。

もしくは「○○徴候がなかったらどれくらい否定的なの?」といったことは自分で診察してても気になってくると思います。

そんな時にサッと読めるものがこちらです。さまざまな身体所見の感度特異度などが表に纏まっており、非常に有用です。

ぶっちゃけ上級医は血液検査とCTなどの画像検査などで多くを判断していることが多い気がしますが、やはり身体診察はタダで多くの情報が得られるし、検査結果が微妙な時の判断材料として効果を発揮します。

ちなみに、診察診察!!!と張り切っているとバイタルサインを忘れることがあります(マジで)ので、何よりもまずはABC+バイタルサインということは忘れないでください、自戒も込めて笑

この本は心不全や脱水、意識障害、せん妄などの症候別にわかれていますが、鑑別診断が浮かんできた時の身体診察としては「身体診察 免許皆伝」でしょうか。こちらは「○○を疑った時に意識する身体所見」といった疾患別にわかれています。個人的には好きですがAmazonの評価はイマイチですね笑

 

 

 

語り始めたら止まらなくなりそうなので、ひとまず病棟編と救急外来編で今回は終わりにしたいと思います。

次回以降、画像診断編や各診療科編、感染症編などで続編ができたらと思います。

皆さんの参考になれば幸いです。

冬メック模試 結果

こんにちは。

2020年になりましたね。

今年もよろしくお願いいたします。

 

というわけで、冬メックを受けました。

結果はこちら。

 

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学内の方が若干偏差値が低いの、やっぱり同級生は優秀なんだなぁと思いました。

というかMM模試で9割超えても偏差値があれだけだったの、いま考えると異常だったんですね…笑

 

MM模試を受けてからの過ごし方ですが、medu4のテストゼミをひたすら受けておりました。

medu4のテキストを復習→テストゼミ×3/dayという日々を過ごしていました。

復習してみると あぁ〜そういえばこんなのあったね みたいなのも多々あり(腹膜偽粘液腫とか笑)、

またMM模試で間違えた問題が実は国試の過去問のマイナーチェンジであることが判明したりと

自分の中ではMM模試を受けたときよりも穴は少なくなっているはず!と自身もありました。

冬メックは9割超え、できたらMM模試超えを…!

と考えていましたが撃沈しました😅

 

そもそもMM模試以外を受けていなかったのでメック、TECOMの模試は知りませんが

難しくないですか?

まだマークシートはまだ提出していないので平均がわからないし

いつもメック模試はこの難易度なのかもわからないのですが

必修でもボロボロと落としていてけっこう焦りました。

そして公衆衛生の出来が悪かったです。

ちゃんと計算していませんが正答率は5割くらい…?

こんなの知らん!!知ってる必要ある?!

と復習しながらmedu4のテキストを見てみると あれ?載ってる… というのも多々あり…

ただ、明らかにこれはmedu4では扱ってないな、みたいな知識も散見されたので

穂澄先生が講義中にたまに仰っている「僕は覚えるのはここまででいいと思う。少なくともこれまでの国試はこれで対応できます!まぁもちろん模試とかではもっと深く聞いてくるかもしれないけどね!笑」というセリフは本当でしたね笑

 

個人的には、D66は選択肢に心エコーがないのが意外?でした。

逆にB33は え?この情報だけでdのやつ疑う?! と思いましたが

疑うのかなぁ…笑

 

というわけで偏差値等わかりませんが

必修の危機感を覚えたのでいわゆるパルス療法みたいなものをしてみようかなと思います。

 

あとは今日と明日でテストゼミの予想編を解きます。

ラストメッセージの頃にはもうやることないや〜という状態になってるだろうと思っていましたがそんなことはありませんでしたね笑

 

もう国試まで1ヶ月切りましたね。

まずは体調を崩さず、あとは公衆衛生と必修をしっかりやったらもう2月って感じでしょう。

では!

メディックメディア模試 結果

こんにちは。

4ヶ月ぶりくらいですね笑

いくつか下書きとして書いてはいたのですが、どれも中途半端な状態で止まっていて更新できていませんでした。

 

メディックメディア模試(以下MM模試)を最終日とその前日の2日間を使って解きました。

 

いままでUSMLE、臨床推論、、と言い訳して逃げてきた国家試験ですが、先月の臨床推論GPをもってひとまず終わりとしました。

GPは入賞できませんでしたが、外野から見てたエキストラ問題のクリオグロブリンとlivedo racemosaは分かったのでまぁよしとしようということにしました笑

個人的にはアジア帰りの症例は ん〜〜〜、といった感じでしたね。

 

というわけで本題のMM模試の結果です。

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一般臨床が自己採点から4点落ち、なぜか必修が2点上がって結果としては自己採点−2点。

全て試験を終えてネット提出したので、一気に全問題を一つ一つ確認しながら打ち込み

これ絶対どこかで打ち間違えてるよ、と思いながらポチポチiPadで打ち込んでいましたが

まさか4点も落ちるとは…。

本番は10回くらいマークミスがないか確認したいと思います笑

ひとまず偏差値は体温以上あるので、このまま焦らず惑わされず、着々と進んでいきたいと思います。

とか言いながら今日は家族でアウトレットに行ったりしたので気を引き締めたいと思います。

好きなブランドの3000円もするスリッパを買ったので冬の勉強はこれで乗り切ります笑

 

必修はもちろん、一般臨床は80%オーバーを目指していたので驚きました。

基本的にA〜Fどれも1時間ちょいあれば終わるので、一応買うだけ買っていた夏メックと冬メックは1日で解こうと思います。

手応えとしては、言われているほど簡単には感じませんました。

公衆衛生がまだ終わっていないのでけっこう公衆衛生でポロポロと落としていました🤨

あとは何より必修or禁忌落ちがめちゃめちゃ怖かったのでひとまずホッとしました。

1問、禁忌覚悟で答えたものがあったのですが、結果的に禁忌ではありませんでした。

解いた方ならわかるかも?

 

解いて提出したのが今日なので、偏差値などの結果は明日こちらに貼りたいと思います。

自分の偏差値がわかるのはこれが最初で最後となるのですが、偏差値50を上回って安心したかったですね。

9割取ればさすがに平均は超えたかな…?

昨年のMM模試は散々な言われようだったのを踏まえてか

今回はかなり簡単になった、みたいなつぶやきが多く見られるので、平均はどうなるんだろうと不安です🤨

というかそもそも、模試の平均っていつもどれくらいなんですかね?笑

 

まず国試が6ブロックに分かれているということから知らなかったのですが

そんなレベルだったので「どの問題が必修とかわかるのかなぁ」なんて思いながら解き始めましたw

(BとEがまるごと必修です、一応笑)

 Aの表紙を見て 1日で2時間45分×3かぁ…めんどくさいなぁ🤨 と思ってしまいましたが、それぞれ試験時間は違うんですね笑

 

てっきり必修というのは実臨床における手技とかについての問題だけだと思っていたので解答冊子を見るまで 必修全然なかった…? と混乱しました。

それぞれの必修ブロックは50問?あるうちの後半25問が3点問題になっているのですね。

8割を切ったら問答無用で不合格というのは知っていましたが

200点の必修で3点問題が50問あるとなると、そんなに必修落ちってあり得なくもないじゃん?とそのとき初めて現実を知りました(遅い)。

実は1日目に採点してしまったのですが

何も知らずに解いてる間はBも へいへ〜い👏🏼 って感じで適当に読み進めて解いていったのですが

その事実を知ったときはすごい怖いことをしていたなと思いました😇

 

今回正解していた内容も、問題文を読みながら「〜が聞かれたら嫌だなぁ…」と恐る恐る選択肢を見てホッとしたりと

点数には現れない課題もたくさん見つけられたので良かったです。

模試は今回が初めてなので模試としての完成度を比較はできないのですが

個人的には本物の国試のようなクオリティだと思いました。

難しすぎず、簡単すぎず(1,2問なんでこれを聞くためにわざわざ症例問題にしたん?みたいなのはありましたが笑)。

同級生の優秀勢たちは全体で95%くらいは取っているんだろうしすごいなぁって感じですね🙀

 

なんだか思いのほか初の模試でグダグダ書いた結果けっこう疲れたので近況報告はまた後日にしたいと思います笑

 

それではまだまだ国試まであと少しですが、6年生の方はお互い頑張りましょう✊🏼

 

 

追記(2020/1/23)

散々叩かれていたという第1回、つまり2018年度のMM模試も解いてみました

もちろん偏差値などは出ないので正確な難易度は不明ですが、今年のものと比べても明らかに難しかったです。

今年のものは国試の過去問のマイナーチェンジが多かったのを解いた後に知りましたが、昨年のものはかなり「当て」に来ているのが伝わりました。

結果はこちら。

 

A 58/75→77.3%

B 89/99→89.9%

C 47/66→71.2%

D 58/75→77.3%

E 91/101→90.1%

F 68/84→81.0%

般臨 231/300→77.0%

必修 180/200→90.0%

総合 411/500→82.2%

 

必修が難しかったと聞いていたので特に気をつけましたが、個人的には一般臨床の方がずっと難しく感じました。

というより、そんなの知らんwwみたいなものが多かったです。

〜サインが認められるため◯◯である

といった解説を読んでも、そもそもそんなサインを知らない、というのも1,2個ありました。

しかし逆に言えば新しい知識が増える感覚はとても楽しかったです。

必修落ち覚悟で臨んだので逆に自信にもなりました。

今更ですが、これからちゃんと国試の過去問に取り組みたいと思います。

それでは。